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南の島の図書館だより

  毎年沖縄本島では、新暦4月5日頃から5月のGW期間の週末に「清明祭(シーミー)」という先祖供養の行事がある。中国の暦法で24節気の1つである清明(旧暦3月)の節になると、子孫関係者一同が墓前に集まって先祖の供養をして、家族の健康祈願と1年間にあったことなどを報告する。

 

 また、本島とは違い、久米島、宮古島、私の生まれ故郷の石垣島では、「十六日(ジュールクニチー)」という旧暦の1月16日に営む先祖供養があり、グソー(後生=あの世)の正月と言われ、学校は半ドンで終わる。「清明祭」も「十六日祭」もピクニック感覚で墓前手を合わせた後に、重箱やオードブルを親族一同で輪になって食べる。親族一同が集合する親睦の場になっている。最近の墓は沖縄独特の亀甲墓から本土のような墓に天井がついたものがよく見られるが、この行事以外にも「旧盆」があり、旧盆も盛大に催される。

 

 

「清明祭」と「十六日祭」には、線香(平御香:ヒラウコー)、銭紙または打ち紙(ウチカビ:あの世にいる故人に持たせるお金)を用意する。ウチカビの表面に打たれているのは、琉球王国時代の鳩目銭。ウチカビは銀行ではなく、スーパーやコンビニで購入できる。あの世でのウチカビ一枚のレートは50万円だそうだ。そして、お花、お茶、お水、お酒(泡盛)のほかに欠かせないのが祝い用の重箱料理である。

 餅を15個詰めた重箱とカステラかまぼこ、魚のてんぷら、揚げ豆腐、大根の煮付け、白または赤いかまぼこ、ゴボウの煮付け、こんにゃくの煮付け、豚三枚肉の煮付け、昆布の煮付けなどの料理を奇数個詰め合わせたものを準備する。からは現在本島で盛り付けられている重箱9品になるが、久米島、宮古島、八重山では、大根の代わりに人参の煮付けまたは田芋の唐揚げ、寒天を入れる地域もある。これで墓参りの準備は万端だ。

 3月に、某カルチャースクールで「清明の重箱料理」講座が開催され、定員20人に入った私は少し不安だった。なぜなら男性は私と無理に誘った友人の2人だけで、あとは女性だ。

 

 昔から女性まかせの法事料理である重箱を男性でも作ることができるのか。講座開催を一年前から首を長くして待っていた。沖縄では法事料理の準備は女性の役割だ。昔から姑、長男の嫁が中心になって女性たちで料理は作られてきた。

 台所に男性を入れないのは、後先を考えなくていい楽観的でいい周囲に同調せよ という男らしさ役割、ジェンダーの問題だ。

 

 沖縄は人口あたりの離婚率が全国で上位に入っていて、離婚原因としては、男が働かない、DV、浮気症がおもな原因で、女性にお金の負担をかけるが、友人と親は大切にする。男尊女卑がいまだに深く残っている。もちろん、沖縄の男性全員がそうではない。中には家事もこなせる責任感のある立派な男性と讃えられる人もいる。

 

 でも、女性はすべての家事をこなしても讃えられることはない。①後先のことを考え②家事をこなし③自分のことは二の次に、という女らしさ役割(ジェンダー)によって沖縄の女性は、この男ジェンダーを支えることで鍛えられ、たくましくも見える。

 

 私たちの登場に、講師の先生は、「メンズがくるの待ってました!」と大喜び。

 ほとんどの受講生が、重箱料理ははじめての経験のようだった。重箱に使用する調味料は、醤油、砂糖、塩、泡盛、みりん、かつおだしだけ。まずは重箱のメイン豚肉三枚肉作りから煮込んで豚肉から出る灰汁を取る、重箱に入れる具のサイズが決まっているのでサイズに合わせて切りそろえ、鍋にかつおだしと泡盛アルコール度数30以上のものを3/4カップ入れ、砂糖を入れ、その次が醤油、中火で豚肉につやがでるまで煮る。最初に泡盛を入れているので、アルコール分は残らない。これで冷まして一品完成。昆布の煮付けに入る。昆布はケーシクーブ(返し昆布)と結び昆布の巻き方があるが、誰が考案したのかケーシクーブは難易度が高すぎて、すかさず全員が結び昆布にすることを決める。

 

 昆布は塩落としと乾燥から水にもどす作業は講師が先に準備してくれたので、昆布を縦2つに折り、一本の昆布を連続で結び、昆布のつけ汁で柔らかくなるまで煮る。鍋には、かつおだし、砂糖、醤油、みりんを煮立て結び昆布を入れて煮しめる。煮えたら一つずつ切って完成である。これと同じく、ゴボウと大根とこんにゃくの煮付けは各グループの担当で作業をこなしていく。

 

 作業で一番大変なのが魚のてんぷらである。沖縄のてんぷらは県外のようにサクサクした天ぷらではなく、衣が分厚いので、魚の衣は重箱に入るように衣は分厚くならないように揚げ、重箱寸法に合わせて切る。

 その他の具材である、カステラかまぼこ、白または赤のかまぼこ、揚げ豆腐は準備されていたので、重箱用の物差しでサイズを確認して具材を切る。

 

 重箱に詰める煮付けた具材は冷まして、傷まないようにキッチンペーパーで水分を取り除く。重箱に詰めるときは、右上のカステラかまぼこの位置を基準にし、続いて四隅を詰め、中央の赤もしくは白カマボコを置く。こうすることで残りのスペースが明確になり、詰めやすくなるようだ。 

 

 位置が決まっているのは、右上のカステラかまぼこ、中央の縦一列(三枚肉・赤・白かまぼこ・昆布)の4箇所だけ。重箱サイズは7.5寸が理想だそう。重箱を詰めるポイントは、重箱の深さにもよるが、ある程度の高さを揃えることで、より美しく見栄えがよくなる。

 

 

 墓前に重箱を置くときの決まり事は、豚三枚肉を手前側に向け、昆布側が墓に近くなるように置く。

 

 

 

 そして出来上がったのが上の重箱だ。

我ながら満足そうな笑顔だ!

 

 沖縄は琉球時代に中国と貿易など交流があり、中国文化の影響を強く受けている。中国や台湾にも「清明祭」はあり旧暦や打ち紙または紙銭(ウチカビ)など、独自の風土文化に取り入れてきた。

 

 

 今年で沖縄は日本国復帰50年を迎えるが、琉球の歴史と文化を絶やさないように、私も小さな一歩から、後世に琉球料理を伝えたい。

 

琉球漆器店でマイ重箱も手に入れた!

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コメント: 6
  • #1

    ひとみ (金曜日, 15 7月 2022 16:34)

    カルチャーセンターで、20人中男性2人のお料理教室、しかも一年も前から予約をしてのチャレンジがんばりましたねー

    私は、銀座にある"沖縄のアンテナショップ"で、店員さんが調理した、魚の天ぷらや、もずくの天ぷら、サーターアンダギーを、食べたことがあります。

    黒島さんが料理した、琉球伝統料理の重箱に、あの魚の天ぷらが入っていることを知りました。

    何気なく何度か食べてたのですが、琉球料理だったんですねー

    琉球の歴史と文化を絶やさないように、小さな一歩からチャレンジ〜いいですね、カルチャーセンターで他の琉球料理教室はあるのかな?

    琉球菓子の本も写真にありましたねー
    楽しくできたらいいですね。








  • #2

    クロまねよん人 (金曜日, 15 7月 2022 17:15)

    重箱料理がどれほど大変か、女性からはいろいろ聞いていたけど、実際にどういうもので、どんな出来上がりか、この写真付きの原稿でよく分かりました。
    こんな美しい料理を作るのは楽しいだろうに、どんなものでも強いられたら苦役だ。
    台所に男を入れず、作るのは女、という性別役割分業は、女も男も、料理づくりを苦労しながら楽しむということを奪われる。子育ても、働くことも。

  • #3

    黒島直昭 (水曜日, 20 7月 2022 09:36)

    ひとみさんへ

     コメントありがとうございます。

    ぼくは小さい頃から法事料理が大好きで、毎年の十六日祭(ジュウルクニチサイ:石垣島のお墓参り)と旧盆が楽しみでした。十六日祭は終わりましたが、次は旧盆があります。ひとみさん、魚のてんぷらのお味はどうでしたか?ちょっと県外の天ぷらとは違いますよね。

    料理教室には、沖縄料理と琉球料理があります。最近、ミミガーのピーナツバター和え物を作りました。とてもうまくできました。

  • #4

    黒島直昭 (水曜日, 20 7月 2022 09:44)

    クロまねよん人さんへ

    コメントありがとうございます。

    長男のお嫁さんは本当に大変みたいです。長男に嫁いだ同級生がいますが、姑さんから小姑さんまで、ギスギスした雰囲気のなか重箱作りみたいです。重箱は楽しくみんなで男女で作るのがいいですよね。
    来月の8月10~12日には、旧盆があります。旧盆はまた盛大に催されます.重箱、果物、お菓子など仏壇にたくさん飾りたてられます。提灯もこれでもかというぐらい飾ります。

  • #5

    うむさん (日曜日, 31 7月 2022 20:36)

    朝ドラ「ちむどんどん」の評判がひどいので、どんなものか観てみたら、あんまりだ。二人の姉妹が状況は異なれど、結婚のために、それぞれ重箱と弁当を男側の家族に作って持参し、男は何もせず。ジェンダーバイアスがそのまま強化されそうで、ホント、チムわさわさ、わじわじ。
    全国の視聴者に黒島さんの原稿を読んでもらいたいです。

  • #6

    黒島直昭 (金曜日, 26 8月 2022 11:16)

    うむさんさんへ

     実は「ちむどんどん」子役時代の10話まで観て、みるのを止めました。
    最初まではよかったのですが・・・主役の黒島さんとわたくしは親戚では
    ないですが、父親が八重山出身のようですね。
    たくさんの料理が紹介されていましたが、「紅芋のおにぎり」や「豚の角煮」は、美味しそうでしたね。ドラマの視聴率が低下したのは、兄貴にみんな振り回されていることですね。
    「ちゅらさん」は、始まりと終わりがよかったですよね。毎日、観たくなるドラマになってほしいですね。